ガイド

クラウドネイティブアーキテクチャとは

クラウドネイティブとは、クラウドの特性を最大限に活かすための設計思想・アーキテクチャパターンの総称です。単にクラウド上で動かすことではなく、クラウドの弾力性・分散性・自動化を前提とした設計を指します。

クラウドネイティブの定義(CNCF)

Cloud Native Computing Foundation(CNCF)は、クラウドネイティブを次のように定義しています。

「クラウドネイティブ技術は、パブリック・プライベート・ハイブリッドクラウドなどの動的な環境において、スケーラブルなアプリケーションを構築・実行するための能力を組織に与えます。コンテナ・サービスメッシュ・マイクロサービス・イミュータブルインフラ・宣言的APIがこのアプローチを例示しています。」

要するに、「クラウドの特性(スケール・自動化・弾力性)を前提として設計されたシステム」がクラウドネイティブです。既存のオンプレミスアプリをそのままクラウドに移した「クラウドリフト」とは本質的に異なります。

4つの中核原則

📦コンテナ化

アプリケーションとその依存関係をコンテナイメージとしてパッケージ化します。環境差異をなくし、ローカル・CI・本番で同一の動作を保証します。Docker・Podman が標準ツールです。

🔧マイクロサービス

単一の大きなアプリ(モノリス)を、独立してデプロイ可能な小さなサービスに分割します。各サービスは独立してスケール・更新でき、障害が局所化されます。

🚀CI/CD パイプライン

コード変更を自動的にテスト・ビルド・デプロイします。人手による作業を排除し、高頻度のリリース(1日数十回〜)を安全に実現します。

📋宣言的API・IaC

インフラの状態をコードで定義(Infrastructure as Code)し、ツールが実際の状態を宣言通りに維持します。Terraform・AWS CDK・Kubernetes マニフェストがその例です。

12-Factor App — クラウドネイティブ設計の指針

12-Factor App は Heroku が提唱したクラウドアプリケーション設計の12原則です。クラウドネイティブ設計の具体的な指針として広く参照されています。

I
コードベース
バージョン管理された1つのコードベース、複数デプロイ
II
依存関係
依存関係を明示的に宣言・分離する
III
設定
設定を環境変数に格納する(コードに埋め込まない)
IV
バックエンドサービス
バックエンドサービスをアタッチされたリソースとして扱う
V
ビルド・リリース・実行
ビルド・リリース・実行の3ステージを厳密に分離する
VI
プロセス
アプリを1つ以上のステートレスプロセスとして実行する
VII
ポートバインディング
ポートバインディングによりサービスを公開する
VIII
並行性
プロセスモデルによりスケールアウトする
IX
廃棄容易性
高速起動・グレースフルシャットダウンで堅牢性を最大化する
X
開発・本番一致
開発・ステージング・本番環境をできる限り一致させる
XI
ログ
ログをイベントストリームとして扱う
XII
管理プロセス
管理タスクを1回限りのプロセスとして実行する

従来型 vs クラウドネイティブ

観点従来型(モノリス)クラウドネイティブ
デプロイ頻度数ヶ月〜半年に1回1日数回〜数十回
スケール方法サーバー増強(スケールアップ)自動スケールアウト(水平拡張)
障害対応単一障害点あり・手動復旧自動フェイルオーバー・自己回復
チーム構成全体で1チーム機能ごとの独立した小チーム(Two-pizza rule)
インフラ管理手動・スクリプトIaC(Terraform/CDK)・GitOps
リリースリスク大きな変更を一括リリース→高リスク小さな変更を継続的にリリース→低リスク

クラウドネイティブ化の進め方

01
現状のアーキテクチャ分析

既存システムの依存関係・データフロー・ボトルネックを可視化する。ドメイン境界(バウンデッドコンテキスト)を特定し、分割可能な単位を見極める。

02
コンテナ化から着手

既存のアプリをDockerコンテナ化することで、環境差異の解消とCI/CDの基盤を整える。大規模なアーキテクチャ変更なしに始められる最初のステップ。

03
CI/CDパイプラインの整備

GitHub Actions等でビルド・テスト・デプロイを自動化する。手動デプロイをなくすことで、ヒューマンエラーを排除し、リリース頻度を上げる基盤を作る。

04
サービス分割(マイクロサービス化)

モノリスから機能単位でサービスを切り出す。一度にすべてを分割するのではなく、変更頻度が高い・スケール要件が異なる部分から順次切り出すのが現実的。

05
オブザーバビリティの整備

ログ・メトリクス・トレースの3本柱を整備する。分散システムでは障害箇所の特定が難しくなるため、可観測性は必須。

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